タオルの原料として最もポピュラーなのが綿ですが、その他の天然繊維や化学繊維のような天然素材でも製造されていることをご存じでしょうか。
また天然繊維の中でも大きく分けると「植物繊維」と「動物繊維」に2種類があります。
今回は天然繊維である植物繊維と動物繊維で作られるタオルの特徴についてご紹介いたします。
麻のタオルの特徴について
◆ 使えば使うほどに魅力が増すリネン
日本では靭皮(じんぴ)繊維・葉脈(ようみゃく)繊維を総称して「麻」という漢字の一文字にまとめられていますが、英語では「苧麻(ちょま)≒Ramie、ラミー」、「亜麻(あま)≒Linen、リネンまたはFlax(フラックス)」、「大麻(たいま)≒Hemp、ヘンプ」、「黄麻(こうま)≒Jute、ジュート」、「マニラ麻」、「サイザル麻」のようにそれぞれ細かい繊維種別によって違う呼び名があります。
日本で麻の繊維として使用されているのは主に 苧麻 (ラミー)、亜麻(リネン)になります。
麻の商品を手に取るとシャリ感や清涼感の特徴を感じることができますが、これは麻にリグニンやペクチン質といったガム質が多く含まれており、綿を加工する産地がこのガム質を落とさない状態の糸で最終の製品とされるためです。
しかし何よりもリネン最大の特徴は、使えば使うほどにガム質が落ちて、リネン独特の優しい白さや柔らかさが出てくる点にあります。
毛のタオルの特徴について
◆ 課題は多いが新しい商品開発に期待
毛と言えばウールを連想しますが、ウールは羊毛だけに使われる名称で、他の獣毛繊維(モヘア・カシミア・ラクダ・アルパカ・アンゴラなど)はヘアーと呼んで区別しています。
毛は「ドレープ性が良い」、「染色の深みが出る」、「シワの回復が早い」、「吸湿性があるのに揮発性がある」のような特徴を持っていますが、家庭で洗濯すると糸の緩和と収縮が起こりやすいという欠点を持っています。
これらの欠点を改良した綿と混紡した糸や、防縮加工ウールが開発されてパイル糸として使用される例も増えています。しかし、吸湿性はあるが吸水性がなく、綿と同時に染まらないといった制約がまだ残っており、毛糸をタオルを作る糸として取り扱うメーカーは限られています。
吸湿性を生かした生地作りや毛の持つ色合いをそのまま生かした商品作りへの活用が期待されています。
絹のタオルの特徴について
◆ 「天の虫」から生み出される天の糸
蚕(かいこ)が産み出す絹糸の魅力は、何と言ってもその光沢と肌触りです。その要因となる長繊維が得られる特徴と染色した際の発色性の長所により、昔から尊ばれてきました。天の虫という字を持つのも納得できます。
また、法隆寺に伝えられている国宝「獅子狩文錦(ししかりもんきん)」のように唐の時代から重宝されてきており、ササン朝ペルシャから中国を経て日本に通じる陸と海のシルクロードを想起させるロマンあふれる糸でもあります。
絹糸は蚕の幼虫が繭をつくる時に吐き出す糸ですが、主に絹繊維部分のたんぱく質(フィブロイン)とそれを覆って接着剤と潤滑油の役割を果たすたんぱく質(セリシン)からなります。
<絹糸の長所>
- 光沢があり深みのある艶を持つ
- 繊維にコシがあって強く、ドレープ性がある
- 吸水、吸湿性に優れ、染色性も良い
- 熱を伝えにくく、冬温かい
- 肌触りが良い
<絹糸の短所>
- 紫外線、140℃以上の熱、酸素、蛍光増白剤、塩素漂白剤やカルキを含んだ水によってアミノ酸の一部が黄色の物質に変わり黄ばみが出る。
- 摩擦に弱く、ささくれが出来やすい
- 水で洗濯出来ない
- シワになりやすい
絹の加工は機械設備もさることながら、綿を染めるのとは性質の異なった染料を使うため、綿と一緒に染めることができません。絹を使う際には綿と混紡した糸を使うのではなく、絹糸を一定の長さにカットして絹の綿として紡績した糸を他の産地から先染めして購入し、染色品として使用するといった例が増えています。
しかし絹糸が高価なことから分かるように、染色する前の絹糸の質を揃えることは難しいことから、同じ商品を同様に色を再現することが難点とされています。
いかがでしたでしょうか。
タオルに利用される自然繊維はどれもそれぞれの特徴があって惹かれるものがありますね。
タオルを購入する時にデザインで決めることが多くありますが、繊維の特徴を理解して自身の好みにあったものを選択するのもひとつです。
次の記事では化学繊維のタオルについてご紹介します。また、マイクロファイバー製のタオルについてはこちらの記事をご参考ください。
※今治タオルプロジェクト「タオル読本」を参考に一部変更して記事にしています。